有限会社アトミックハート

当店は辛いものに挑戦の店ではありませんので・・(笑)

麻婆豆腐(S)

炎麻堂を始めて10年になろうとしますが、たまに我こそは辛いものが得意でどんな辛いものでも負けないぞ!的なお客様がいらっしゃいます。(笑)

確かにその気持ち解ります・・店の名前が炎麻堂なんて、なんだかおどろおどろしいネーミングだし、辛い料理を売りにしているのも確かですし・・

でも以前こんなことがありました・・うちの和田シェフが経験した話です。

その日のお客様の中に「俺はどんな辛いものでも大丈夫だから、これでもかってぐらい激辛な麻婆豆腐を作ってみろ!」と・・んでそれから、どこどこのお店のあらゆる辛いものも撃破したと武勇伝をぶちまけておりました。

その時、和田シェフの目がギラッと光りました!

そして心の中で「見てろよ!ギャフンと言わしてやる!」 まぁ、僕はホントにギャフンと言った人を見たことはありませんが・・

そう思って、和田シェフは挑戦者のボクサーがこれから世界タイトルマッチを挑むかの如く厨房のリングに上がって行きました。

その時、たまたまテレビの取材でほしのあきさんが20辛の麻婆豆腐を食べるという番組のために用意しておいた激辛調味料がありました。 ちなみにこの激辛調味料、どのくらい辛いかと言いますと・・

辛さを表す値をスコヴィル値と言いまして、タバスコで大体600~1200ぐらいなのですが、これはナント120万スコヴィル! タバスコの2000倍はあろうかという、そりゃ恐ろしい辛さです!

僕も試しにつまようじの先にチョコンとつけて舐めてみましたが、辛いというより痛くて痛くて、荒川静香も真っ青のイナヴァウワー状態になってしまいました!

その世にも恐ろしい調味料を和田シェフは打ち出の小づちを振るように鍋に向かって振っていました。

その時の顔は真顔でした・・

そして出来上がった麻婆豆腐は意外にも色味としてはもちろん辛そうでしたが、まぁ僕たちが普段目にしている範疇でしたので、そんなに見た目の驚きはありませんでした。 ただ中身の正体を知っています・・そうそれは、ちょっと走り屋っぽく改造したカローラにブガッティ ヴェイロンのエンジンを積んでいるような麻婆豆腐なのです!!

和田シェフは食えるもんなら食ってみろ!と思いながら、万遍の笑みで「お待たせしました!」

お客様はどれどれどんなもんかとばかりにカローラを、いや麻婆豆腐を一口、口に入れました・・

・・・ ・・・ そして・・・

 

「こんなもん食べられるかよ!」

このお客様は相当お怒りになって、そして嫌な気持になって炎麻堂を去りました・・

僕たちはこの事件で一つの教訓を学びました。 それは・・

 

「こういうことでお客様に勝ってはいけない!」

 

もし、もっと控え目にしていたとしたら、きっとこのお客様は気持ちよく帰ってくれたかもしれない。

確かに辛いけど美味しいよ!と言ってくれたかもしれない。

「このぐらいの辛さじゃ全然ビクともしないよ!」と言ったら、「参りました!」と言えば良かったのではないかと・・

この時から我々は美味さがあってこその辛さである! 辛く作っても味が美味しくなければ意味がありません。

ただ僕の経験上、飛び抜けて辛いものが好きな人は、辛くないと美味しいと思わない傾向が強いような気がします。 そういう方はまず辛さありきで、一般的な人なら絶対美味しいと思わないし、作っている料理人だって味見なんてできません。

こういうことなので、炎麻堂は一般的に美味しく食べられる範囲の中での辛くて香ばしい料理のお店なので、辛さに挑戦系のお店ではけっしてございませんので、そこんとこヨロシクお願いしますね!

(ただ裏メニューで麻婆豆腐は10辛まで作っていますが、これも美味しく食べられる範疇です!)